工学的応用の基礎となる様々な物理現象を数理物理学の立場から捉え直し、コンピュータを用いてその解析と理論的予測を行っている。特に量子力学を用いたミクロ現象と、カオスに代表される様々な複雑系現象の研究に力を入れている。
加速器実験における複雑な粒子反応の解析を詳細に行うため、量子場理論に基づいた自動計算・シミュレーションプログラム「GRACE」の開発を、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の理論グループと共同で行っている。
古典および量子力学におけるカオス現象、生物の群行動や砂山崩れ等における自己組織化現象、確率微分方程式による株価予測、遺伝的アルゴリズムの数値積分への応用、銀河系生や惑星運動など、様々な複雑系のシミュレーションを行っている。
図1 カオス水車のJAVAアニメーションと砂山崩れのシミュレーション
宇宙から飛来する素粒子ニュートリノの検出器として3千トンの純水を用いた「Kamiokande」が良く知られているが、よりエネルギーの高い粒子の検出を行うために岩塩鉱を用いる計画が進んでいる。世界各地にある岩塩鉱のうちどれが有用かを明らかにするため、各種試料の電波減衰長の測定を「摂動空洞共振器」で行っている。
図2 摂動空洞共振器
身近な社会インフラ問題を取り上げ、効率、経済性、社会便益等を指標に最適配置について考える。実際の都市を想定し、クリーンエネルギー自動車(CEV)のための燃料スタンドや、犯罪防止のための交番の最適配置などを求めている。
波動力学ではできなかった電子等ミクロの粒子運動の見本経路を視覚化し、半導体や走査トンネル顕微鏡の基本原理であるトンネル効果や、量子コンピュータや量子情報通信の実現にはなくてはならない重ね合わせ状態の直感的な理解を目指していく。ここでの理解は、様々なナノテクノロジーの実現に有用である。
図3 水素原子中の電子軌道(2s軌道)と2重スリット実験のシミュレーション
近年完了したヒトゲノム計画により大量に蓄積された遺伝子情報にアクセスし、その解析を行うことによって、生物進化のメカニズムや種の特性を明らかにすることを目指す。
毎年春に実施する高エネルギー加速器研究機構見学会において知見を拡げるとともに、夏のゼミ合宿を行って研究進捗状況の報告の場としている。