2017年度 物質生命理工学実 験I 第9テーマ

 




計測アンプの製作

 




1.目的


 理工学部で研究をしていて電子 装置を使わない人は殆どいない。その際にちょっとした配線の間違いで、データにノイズが入ったり装置が誤動作する場合がある。特にコンピュータが組み込ま れた装置では、データの間違いに気くことは難しい。そんなとき、電子装置の仕組みを少しだけでも知っていると単純な間違いを防ぐことができる。この実験で は増幅回路(アンプ)を自分で実際に作って電子装置の動作原理を学び、少しだけ電気に親しんでみる。


2.電気の知識


 オペアンプは理想的な特性を持つ増幅回路で、オームの法則だけで基本的な動作は理解でき る。その動作を理解するため、初めに基本のオームの法則から復習しよう。


2-1,オームの法則

 オームの法則によると、電気抵 抗Rにかかる電圧Vと流れる電流Iの間には

テキスト ボックス:  
図1 水と電気の比較                V=IR                      (1)

の関係がある。この一見簡単な式 の意味を正しく理解しているひとは実は少ない。それは電流と電圧を一緒くたにしてしまうからだ。そこで水を使ってイメージを作ろう。高いところに置いた水 タンクにホースをつないで蛇口を開ける。電圧は水にかかる圧力、電流は流れる水の量fと考える。水圧でホースの中を水が流れる。水の流量は圧力に比例する。同様に電流は電圧 に比例するが、圧力と流れる水の量は同じものではない。

 さて、電圧Vに対する電流Iの比例定数を1/Rとすると、Rは電気の流れにくさを表すので抵抗と呼ばれる。逆の見方をすると、抵抗Rに電流I を流すとその両端にIRの電圧差が発生する。逆に考えて、この電圧差Vを抵抗における電圧降下と呼ぶこともある。







テキスト ボックス:

2-2.オペアンプの働き

 次にオペアンプの説明をしよう。オペアンプ(Operational Amplifier:演算増幅器)は多くのトランジスタを集積 した増幅回路で、その特性だけを知っていればさまざまな回路動作を実現できる。

 オペアンプの記号は図2で、反 転入力(V)と非反転入力(V)2つの端子にかかる電圧の差を増 幅して電圧として出力する。その他に、通常は省略されるが、正と負の電源があり、そこから回路として動作させるためのエネルギーを供給する。理想的なオペ アンプには、以下の3つの特徴がある。

 1, 入力インピーダンスが無限大(入力に電流が流れ込まない。)

 2, 出力インピーダンスが0(出力はいくらでも電 流が流せる。)

 3, 電圧増幅率が無限大(入力電圧の差が小さい。)


テキスト ボックス:  
図3 反転増幅回路
 
図4 入出力電圧の比 通常は動作を安定にするため、出力から入力にフィードバック抵抗を通して負帰還(ネガ ティブ・フィードバック)をかけ、適当な増幅率に抑制する。基本となる反転増幅回路(図3)を例にその動作を説明する。

 V入力はグランドに接続されているので常に0V。また出力V0 が 無限に大きくならないために、V入力はV入力にほぼ等しい。(実際は出力からのフィードバックによってそのように制御されてい る。)これをヴァーチャル・ショートと呼ぶ。その結果、V入力の電圧もほぼ0 Vになる。一方、V端 子の入力抵抗は無限大なので電流は流れ込まず、ViからVoまで、R1R2を通して同じ電流iが流れる。よってV入力=0Vを挟んで両側の抵抗R1R2に発生する電圧降下はR1iR2iである。このときViVoの比は図4のように、0Vを中心にR1R2の比になる。よって、電圧増幅率Aは、

                           2


と抵抗R1R2だけ で決定される。つまり、抵抗2つで増幅器が作れてしまうのだ。以上、理解の確認のため、文末の予習問題を解いて実験開始前に提出すること。(A41枚程度でよい。)



3.実験


 実験では図3の反転増幅回路を実際に作ってみよう。詳細はバイオエレクトロニクス研究室HPの補足資料に 示す。汎用の回路ボード(ブレッドボード)に部品を差 し込んで増幅回路を作り、動かしてみる。テキスト巻末のブレッドボードの説明も参考にしてもらいたい。作業内容はきちんと記録してレポートを正確に作成し よう。記録項目は配付資料を参照して、必要な全てのデータを記録すること。


 


4.レポート作成


 レポートには必ず次の4項目を含める。英文の頭文字か らIMRDCと呼ぼう。

1,目的I (Introduction, 緒言)

 学生実験なので目的は教員から 与えられる。自筆で書くことで内容をしっかり把握しておこう。

2,方法M (Materials and Methods, 材料と方法)

 方法は配付資料と実験前の説明 で教えられた内容に、自分で説明を加えて実験方法の説明を作る。図を用いて分かりやすい説明にする。

3,結果R (Results)

 実験で得られた結果を書き写 す。何が重要な特徴かを考えて波形を記録する共に、重要な数値をその場で記録し、その部分を図に示す。

4,考察と結論DC (Discussion and Conclusions)

 実験結果について考察する。考 察項目は、「測定値やグラフが予想と一致しているかどうか。」「測定値の誤差はどのような原因で発生するか」「実験の目的はどこまで達せられたか」など。 できればさらに自分で考察したことを加える。最後にまとめとして結論を書く。

(レポート作成には、バイオエレ クトロニクス研究室HPLecture>実験Iの補足資料を参考にして下さい。URL : http://www.ml.seikei.ac.jp/biolab/lecture/LabClass2/labclass2.html




予習問題

1.正しく設計されたオペアンプ 増幅回路では、なぜV+V-がバーチャル・ショートされるのかを説明せよ。

2.電圧増幅率10倍の非反転増幅回路を作るた め、入力抵抗R11kΩに設定したら、フィードバック抵抗R2は何 Ωになるか。





20174月作成


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