富谷研では主にコンピュータを使ったシミュレーションを行っています。
コンピュータを使えば本来なら目に見えないような小さな物質からブラックホールに至るまで画面上に表現することが可能なので、どんなものでも研究テーマになり得るのです。
コンピュータを用いれば、分子構造やナノサイズデバイスなどの、実際には目には見えないような微小構造を再現する事が出来ます。
分子設計のテーマでは、さまざまなモノの分子構造をコンピュータ内に再現して、モノの特性を理論的に研究していきます。
落下しているボールのような運動している物体の様子というのは、物理学を勉強すれば数式を使って表わすことが出来ます。
そして、その数式を解けば運動している物体の速度や位置は簡単に分かります。
しかし、ときには複雑な形でない式で表される運動にも関わらず、物体の速度や位置が複雑で予想も困難になることがあるのです。
物理の世界では、その様な運動をカオスと呼んでいます。
量子というのはナノサイズのようなとてもスケールでの物理学を扱う際によく用いられる言葉です。
近年では様々な電子部品が小型化しているので、ナノスケールの物理学が新しい電子部品の開発には必要不可欠となっています。
カオスな運動では、運動の初期状態や条件のほんの些細な違いが運動の様子を大きく変えてしまいます。
量子の世界でもカオスな運動は存在しますが、ナノスケールでの運動の様子を、実験で観測するのは簡単なことではありません。
そこでコンピュータの出番となります。
ナノスケールのそれもカオスという非常に観測しにくい運動を的確に表現することは、ナノテクノロジーの発展に重要な事なのです。
右のアニメーションは電子のような波として伝わるエネルギーがリング状のナノデバイスをすんなりと通過出来るかをシミュレーションしたものです。
磁力で波の動きに変化を与えて、カオスな運動が変化する様子を再現しています。
リモートセンシングとは読んで字のごとく遠くから対象を観測する技術のことですが、具体的にはどこから何を観測するのでしょう?
答えはズバリ、宇宙から地球を観測するのです。さらに詳しくいうと人工衛星等のはるか上空にあるプラットフォームから、地球表面のさまざまな情報を観測する技術のことを指します。
みなさんがご存知の気象衛星の「ひまわり」から送られてくる気象情報もリモートセンシング技術の一つなのです。
富谷研ではアメリカの地球観測衛星である「ランドサット」による光学観測データを解析する研究を行っています。
はるか上空から地表を観測する技術の最大のメリットは、一度に広範囲のデータを観測できる事です。しかし広範囲のデータを観測するという事は、その分データの精度は低いものとなります。
しかしコンピュータの力を借りれば、一見荒く見える広範囲データからも詳しい情報を抽出する事が出来るのです。
富谷研では、広範囲における土地表面の状態を色分けによって分類する研究を継続して行っています。
衛星から地表面を複数の異なる波長の電磁波によって観測し、得られたデータを統合する事により、その地表面が森なのか、岩場なのか、はたまた海なのかという分類をすることが出来ます。
富谷研ではコンピュータで扱える限り、物理現象でなくても研究テーマとして扱う事が出来ます。
例年にはない研究テーマにも関わらず、学生自らが希望して立ち上げた研究テーマも存在します。
経済物理学に関するテーマでは、株価の変動やトレーダーの動向の様子に物理学的な特徴を探し出すといった内容や、マルチエージェントモデルによる複雑系である市場のシミュレーションを行っています。
音響学においては、特にコンサートホールや楽器の胴体などの閉領域あるいは準閉領域での共鳴現象の解析に、量子力学で培われた手法を応用することで著しい結果を得ています。
紛粒体の研究では、回転するドラム内で精製される砂糖や小麦などは、ドラムの中心部分と端部分で粒子径や成分に違いが出る偏析現象の解析を行いました。
富谷研では森羅万象様々な研究テーマを扱いますので、研究するに当たってどのような知識が役に立つかというのも千差万別です。 しかし、研究する分野ごとにこれだけは知っておきたい知識や学習しておきたい単元というものはある程度決まっているものとなります。 そして、それらの勉強は学科の授業カリキュラムをこなしていれば自ずと身につくものとばかりです。 基礎の勉強こそが最も大切なのです。
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