成蹊大学理工学部物質生命理工学科
Department of Material and Life Science, Seikei University

本の紹介

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「動物のお医者さん」、佐々木倫子著、白泉社文庫


札幌にある大学の獣医学部を舞台とした漫画です。獣医学部が舞台となっていますが、理系の大学生活が良心的な正確さで描かれていますので、研究室生活を垣間見ることができます。ただし、この漫画に出てくるような教授や学生が実際に大学によくいるという意味ではありません(念のため)。

1990年前後の作品ですので、携帯電話もインターネットも出てきませんし、CD-RもUSBメモリーももちろんありません。パソコンのデータ保存に5インチのフロッピーディスク(3.5インチのフロッピーディスクのような強度はないディスクなので、すぐ壊れます)を使っている描写もあるくらいですが、描かれている大学生活は現代にも通じます。大学生活というとサークル活動やアルバイトの印象を強く持つ人もいるかもしれませんが、理系の場合は研究室生活が中心的なものとなっていきます。配属された研究室の教員や大学院生との関わりが深いのはもちろんですが、他の研究室の教員や学生との関係も場合によっては深まります。研究ばかりの生活が必ずしも人との交流がないわけではなく、むしろ交流しながら、時には楽しく時にはうんざりしながら、進んでいきます。研究生活はけっして味気ないものではなく、思わぬところで(良くも悪くも)事件が起こったりする様子が、とぼけたユーモアのセンスで描かれています。

獣医学部の中の研究でも、薬学や生化学に近い研究もあり、また学生たちの就職活動も一般的な理系の学生の活動に近い部分もあります。入学から卒業して就職、もしくは大学院進学して、修了後の就職や開業といった流れが見られますので、理系の大学に進むとどうなるんだろう、と思う皆さんの参考にもなると思います(ただし、大学や学部、学科によって制度は多少異なります)。もちろん、純粋なコメディーとしても楽しめます。



2010年3月12日