成蹊大学理工学部物質生命理工学科
Department of Material and Life Science, Seikei University

本の紹介

本の紹介

[ Top Page ][ English ]




[ 本の紹介目次に戻る ]


「言葉と戦車を見すえて」加藤周一、ちくま学芸文庫


現代を生きていると、何らかの形で世界と関わらずにはいられません。例えば、研究をしているだけでも、ときどきは国際会議に参加して他国の研究者と意見交換する機会があります。外へ出向かなくても、書物や論文を読む中で関わることもあります。学生のみなさんの中には、まだ世界との関わりを感じていない人もいるかもしれませんが、すでに私たちの日常生活でさえ、世界に向かって開かれています。

世界と関わる中で、もし何か心にひっかかるものを感じるときがあれば、この本の核心に近づけるのではないでしょうか。この本には、1946年から2006年までの加藤周一の著作が収録されています。それらの記述の間に流れるものにはつながりが感じられます。

私がこの本に出会ったのは、他の文化圏の人々に直接触れて自分の心がざわついた時でした。加藤周一の文章が私の心(理性ではなく情感の方に)に深く届き、私の小さな経験から得たものが何だったのかを理解する助けになりました。

私たちの暮らす日本、近隣の国々、遠くの国々、どんなに遠くても地球上のことは私たちにとって決して無関係ではない。これまでの歩みをきちんと追えば最後にたどり着くのは必ず平和への強い願いとなるのでしょう。

 

2010年4月23日