無機化学I  2016        担当 坪村 

はじめに

 高校時代、無機化学の分野ではともかくさまざまな元素と物質についてひたすら覚えるということが課題であったと思う。炭素を中心に、水素、窒素、酸素等比較的少数の元素を主に取り扱う有機化学と比べて、無機化学の取り扱う元素の数は膨大であり、近年非常な勢いで発展してきたが、学問上も有機化学に比べればまだまだ混沌としている。無機化学で学ぶべき事項はうんざりするほど多いと感じるかもしれない。しかし幸いなことに、100種以上ある元素の性質は全くばらばらではない。周期律表にしたがって元素を並べるとその性質の類似性と規則性がよく分かる。我々は周期律表を常に念頭において、元素と物質の性質を考えたい。もちろん覚えてもらわなければならないことも多いことはある程度覚悟しておいてほしいがかなりの事項は高校時代と重なっている。

 さて、無機化学の有機化学に対する特徴は何であろうか。無機的という言葉は、日常「冷たい」とか「生命の感じられない」とかいう場合に使われる。確かに一般には、生命に関係ない金属元素などを含むものが無機物で、生命に関係する物質が有機物と思われている。しかし、多くの金属元素が生命の維持に欠かせないことも知られるようになり、そして有機化学者も金属を含む化合物を日常的に扱うようになってきて、先の定義は崩れつつある。将来的には無機・有機の区別などなくなる日が来るかもしれない。いずれの学問も物質化学の基本となるものであるが特にこの無機化学では物質化学の基礎的な事項(大半は高校時代に勉強したことだが新しい内容も結構含まれるであろう。)を整理し、その上で典型元素の化合物全般について、代表的な物質を紹介することを通して概観する。本講義に引き続き、無機化学IIも履修してもらえば無機化学の一通りを学ぶことができる。高校までの化学や基礎化学I(または基礎化学A)で習った内容も多少含むがその部分は復習と思ってほしい。ぜひ良い成績で修得されることを希望している。

このサイトには講義中のプリントと補足説明を順次載せていく。

講義内容

基礎事項

第1回   元素と原子の起源、原子核反応と原子力 

第2回   周期表と元素の性質の周期性、電子配置 

第3回   電子の軌道と波動関数、共有結合  電子の軌道の形追加説明

第4回   ルイス構造式(電子式)とVSEPR理論 VSEPR理論追加説明

第5回   混成軌道と多重結合、分子軌道法 混成軌道追加説明

第6回   固体と結晶の基礎(イオン結晶、金属と半導体の構造と性質) 

第7回   酸化還元反応と酸塩基反応  

第8回   単体の性質と構造 いくつかの単体の構造追加資料

第9回   単体の反応、化合物の成り立ち、命名の基礎 

第10回  固体化合物の性質 イオン結晶と共有結合性結晶の例 

第11回  水素の化合物 イオン性と分子性 三中心結合 

第12回  分子性酸化物とオキソ酸 

第13回  分子性ハロゲン化物、貴ガスの化合物 

第14回  錯体と有機金属 

第15回  生物無機化学と講義総括 

 関連ファイル

s軌道やp軌道、そして混成軌道の波動関数(excel)


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